10年の時を超えて

2週間ほど前、東京の友人から連絡が。3月初旬に大阪に行くので、晩飯でも付き合ってくれと。

この友人、知り合って30年ほどになるんだけれど、10年前にちょっと色々ありましてそれ以来会っていない。ぼくをマラソンに引き入れた張本人でもあり、年齢（ぼくの一つ年下）も境遇（お互い30代で父親を亡くし親方となる）もよく似ていたので気が合って、よくつるんでいた。ぼくから友人を誘うことはないだろうし、友人からも連絡は来ないだろうと思っていた。もう二度と、一緒に飲むことなどないものだと思っていた。

10年ぶりに会うと、色々あったのでわだかまりがない訳じゃなく、お互いに少し表情が硬く妙に他人行儀だった。でも、それも乾杯までのこと。グラスを傾けると、表情が溶けだして以前の二人の間柄に戻った。話を聞くとこの10年間で友人も色々あって、大変な時間を過ごしたらしい。自身の健康のこと、家族のこと、会社のことなど、結構重い問題にも直面しているようだ。10年ぶりに連絡してきて、ぼくと一緒に飯を食いたかった理由が何かは判らない。でも、なんとなく判る。昔のように頻繁に会うことは、もうないだろう。ぼくから誘うことも、多分ないだろう。でも、ガス抜きがしたい時にはいつでも声をかけてくれと、別れ際に彼に伝えた。その言葉だけで十分だと、彼の表情が答えていた。

これからは、お互い纏っていた鎧を脱ぎ捨てて、裸の自分をさらけ出した付き合いが始まる。ぼくらの関係が、一皮剥けたというか脱皮して成長したって感じがした。